HeathKit TA-28 FUZZ クローン製作のコンデンサ選びでハマりました
@ikisugita-DIYさんとの共同プロジェクトHeathKit TA-28 FUZZのクローン製作が進んでいて、気が付けば年末になってやっとカタチになっています。
かなり時間が掛かってしまいましたが問題(まぁ細かいことなんですが)がいろいろ発生していました。
まずは抵抗選びを振り返ってみる
前回はTA-28の回路シミュレーションと抵抗器の問題を取り上げさせていただきました。
よくネットで製作されている自作エフェクターの製作記事や動画を見せて頂きますと、オーディオ用の抵抗器を使うと良いとか悪いとか、この抵抗パーツはFuzzに向いているとか、抵抗のメーカーを入れ替えると音質が向上したというお話がありましたが、自分の耳や感覚はそれほど経験値がありませんので、そのレベルに至っていません。
それよりも、抵抗の実測値をマルチメーターで計測して、シミュレーションに適用してみると、やはり10%誤差があると歪みに影響が出て来るということが判りました。(解ったような気がしているだけかもしれませんが)
なので、抵抗は種類による音の違いよりもまずは、実測値が重要と言うことでそれ以降試作機を作る時は全ての抵抗をマルチメーターで計測しています。
そしてコンデンサもマルチメーターで実測してる
そして、次はコンデンサも計測し始めると、、、、ドツボにハマってきましたw
こちらが計測を記録していた表の例で、0.1μFの各種コンデンサをマルチメーターで1KHzの周波数で計測した結果の一部です。
で、この表では、実測容量とQ値も記録しています。
Q値はコンデンサの性能を表す、誘電正接値(DF値 – 詳しくはネット検索してくださいw)の逆数で値が高ければ電気的に良いコンデンサということですね。
で、大雑把にフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、電解コンデンで計測値を性能的に並べると、、、、
フィルム>>>セラミック>>電解
とフィルムコンデンサが圧倒的に優れていました。(当然の結果ですが)
カスコン(マイラーコンデンサ)でもちょっと高価なポリプロピレンとかメタライズドなんちゃらでもあまり変わらず高性能です。
古いコンデンサもフィルムは高性能でした。
セラミックは、Q値がフィルムより1桁下回る場合があります、電解コンデンサはさらに1桁Q値が悪いです(同容量で比較)
一方、個体差や誤差の面でみると
フィルム<<電解<<<セラミック
と言う感じで、上の表では、、、、
- 17番のセラミックコンデンサは、実測容量が25%以上も少ない。
- 19番のセラミックコンデンサは容量が10%多くQ値がフィルムコンデンサより1桁も悪い。
こんな風にセラミックコンデンサはブレブレでした。
一方のフィルムコンデンサの容量の実測値は、古いモノ/新しいモノ、高級品/低価格品、であまり関係なく、誤差は5%以内に収まっている場合が多くQ値もあまり変わらない感じです。
funk ojisanもコンデンサをちゃんと計測してビンテージFuzzFaceを復活させた
ちなみに、ちょうどこのコンデンサの検討を色々やっている時に、まさにジャストタイミングでfunk ojisanのYouTubeチャンネルが使えない音のビンテージFuzzFaceのコンデンサを最新のモノに入れ替えて復活させるという動画をアップされていました。
このようにfunk ojisanも(プロなので当然ですが)修理の祭はコンデンサをちゃんと計測され問題を分析されているようです。
でこのビンテージFuzzFaceで使われていた劣化した電解コンデンサを、おそらく大容量のフィルムコンデンサにスワップされ(おそらくバイアス調整もされ)ることで、一気に現代でも使えるFuzzになったと言うことですね。
脱線してギターのトーン回路のコンデンサを考えてみる
なので、話は脱線しますが、ギターのトーン回路のコンデンサで音質比較する際には、最低限でも容量値の計測は必須なのではと思います。
ギターのトーン回路ではセラミックコンデンサが使われる場合が多々あると思いますが、今回の計測では2つセラミックコンデンサの実測はプラス10%〜マイナス25%程度違うと言う結果です。
仮にトーン用の0.047μ表記のコンデンサでも同じ誤差があるとすれば、0.05μと0.035μのコンデンサを比較してしまうことになります。
これでは音が違って当然ですよね。
またビンテージのオイルコンデンサや、ペーパーコンデンサもかなり怪しいですしね(^^。
で逆に、ギターのトーン回路でフィルムコンデンサが不評なのはマイラーコンデンサ(カスコン)と高級なポリプロピレンなどに変えても差を感じ難いのに対して、誤差がすごいセラミックやオイルに変えると、おー違う!っていう感じになるのではと言う気がしませんか?w
で、ギターのトーン回路用コンデンサは、いかに性能が悪いコンデンサを引き当てるか(値がズレていたりQ値が悪いとか)が重要で、それは普通に売っている最新のコンデンサでは無理で、古いコンデンサほどそれにアタる確率が高いと言うことかもしれません。
でHeathKit クローンのコンデンサは高性能なモノを使えば良いと言うわけではなかった
で、長い前振りになりましたが、このように脱線してしまったのはHeathKitの回路(というかFuzz全般?)にも、適度な品質のコンデンサがマッチしていると言えるのではと言うことです。
HeathKitの回路はとてもシンプルで、4つのコンデンサが使われています。
- C1 : 0.1μ入力カップリングコンデンサ(フィルム)
- C2 : 100μエミッタバイパスコンデンサ(電解)
- C3 : 10μ出力カップリングコンデンサ(電解)
- C4 : 0.22μトーン回路用コンデンサ(フィルム)
結論を言えば、これら4つのコンデンサをそれぞれを、オーディオ用と言われるモノで組むとFuzzとしてかなーりツマラナイ音になってしまいました。
ここで、@ikisugita_DIYさんのミラクルHeathKit個体のコンデンサを見ると、、、(ブログの画像を拝借させていただきました)
- C1 : 0.1μ 謎のフィルムコンデンサ(茶色:多分一般品)
- C2 : 100μ TAIWAN製電解コンデンサ(水色:一般品)
- C3 : 10μ ELNA(日本製)の電解コンデンサ(オーディオ用では無い)
- C4 : 0.22μ マイラコンデンサ(緑色:一般品)
となっていますが、いずれも当時のアメリカの電子パーツ屋さんで普通に販売されていたモノと思われます。
HeathKitでは安価なコンデンサで試作することにした
ですが、@ikisugita_DIY さんのHeathKit DISTORTION BOOSTER TA-28は、そのパーツだからこその音がしているとしか思え無いので、逆に現代の高性能パーツに置き換えてもツマラナイ音になってしまうとしか思えません。
なので、、、、まずは以下のオーディオ用では無いパーツで組んで見ることにしました。
- C1 安いマイラコンデンサを使う
- C2 定番Unicon製アキシャル電解コンデンサを使う。これはTAIWAN製なのでw
- C3 偶然にもデッドストックで同じELNA製造のコンデンサを発見したので購入(勿論今では製造されていない)
- C4 安いマイラコンデンサを使う
その後、この試作機を基準にして本番用のコンデンサを選ぶことになります。試作機も数台製作しました。(ハマってますw)
そんなこんなで、次回は肝心のトランジスタのお話と、配線材の吟味wと試作機などについてご紹介させて頂きたいと思います。
また上の試作回路では、基板に銅板貼ってノイズ対策などもやっていますw