インピーダンスのせい?ワウペダルの後にFuzzFaceを繋ぐと上手く動作しない件をシミュレーションしてみた
せっかくVOX V847、JimDunlop CryBaby、Maestro Boomerangの3大レトロワウをシミュレーションしましたので、お次はジミヘンな方に永遠?の話題のワウペダルの後にFuzFaceは上手く動作しない問題をシミュレーションで掘り下げてみました。
VOX V847 + FuzzFaceのシミュレーション回路図
例によってシングルコイルPUでギターのボリュームは8でワウペダルの動作シミュレーションしてみます。
VOX V847→FuzzFaceのシミュレーション結果
下のグラフの赤い線がV847単体での周波数特性、緑がFuzzFace単体の周波数特性、青色がV847>FuzzFaceの周波数特性です。
もう見事に期待通りの結果ですね。(^^
V847の後ろにFuzzFaceを繋げた場合はワウペダルの操作による周波数の変化がほぼ無くなり、しかも1Khz以上のFuzz+トレブル部ブースターになるようですね。
なので、細いFuzz音でワウペダルを踏んでもあまり変化しないという状態になると予測出来ます。
ワウ+ファズが上手く動作しないのはインピーダンス問題?
ネット記事やYouTubeではワウがFuzzで動作しないのはインピーダンスの問題であると(ほぼ)結論付けられていますね。
なので、VOX V847とFuzzFaceの間に10KΩの直列抵抗を挟むことで、V847の出力インピーダンスを増やした状態でシミュレーションしてみました。
VOX V847>10KΩ>FuzzFaceでのシミュレーション結果
赤色の線がVX V847単体、青色がV847を直接FuzzFaceに接続した場合、緑色の線は間に10KΩの抵抗を挟んだ時のシミュレーション結果です。
このように、間にインピーダンス調整抵抗を挟むことで、ワウ動作が改善されたように見えます。
ただ、それでも低域は800Hzあたりから動作していますので変化幅がやや物足りないですし、若干レベル=ゲインが下がってしまいました。
ちなみにこの抵抗を更に50KΩにすると更にワウ変化幅は増大しますが、ゲインもかなり下がってしまいます。
FuzzFaceの前にインピーダンス調整抵抗を挟む効果
で、このようにFuzzFaceの入力に抵抗を挟む回路はネットでもFuzzFaceのモッド回路のうちスムース回路として公開されています。
こちらはfuzzcentralのDIYペダルAxis Faceのスムース回路の例で100KΩの可変抵抗が入力側に設けられています。
これに類似する回路はAnalogmanのSunFaceのシリコンバージョンでも採用されていますし、他のFuzzFaceコピーやクローンペダルでも同様のツマミがつけられていたり、コッソリ基板上に半固定抵抗で付けられていたりします。
この抵抗によってFuzzFace特有のギターボリューム10で急激にゲインが増大、ノイズも急増、場合によっては発信し、加えて急に周波数特性が変わり低音が出るという動作をスムースにするという効果があるようです。
で同様にワウペダルのように出力インピーダンスが高い(というか出力バッファが無いのでワウペダルの操作でインピーダンスが変化する)ペダルも上手く動作するようになるということだと思います。
ワウ+Fuzzが動作しないのはインピーダンスマッチングが原因である、ということがある意味シミュレーションでも確認されたと思いますが、、、単にインピーダンスで片付けられるのかを掘り下げてみます。
バッファを挟むことでインピーダンス問題は解決されるのか?
次は、ワウ動作を改善するにはバッファが有効という話が通説になっていますね。
なので次はBOSSペダルで悪名高い出力側のトランジスタ1石バッファ回路を挟んでみました。
V847>1石バッファ>FuzzFaceのシミュレーション結果
赤い線がV847単体、緑の線が10KΩ追加、青い線がバッファを追加してシミュレーションした結果です。
このように、バッファを追加することで、更にワウの動作範囲が広くなり、レベルも改善されています。
ただ、FuzzFaceが(ギターからFuzz出力全体)12dbくらいのゲインだったので、逆にゲインが上がり過ぎのように見えます。
バッファを挟むと周波数特性は改善されますが、逆にゲインについてはFuzzFaceがよりハイゲインで動作する、つまり微妙なゲインの美味しい領域が無くなってしまうことが予測出来ます。
バッファは単に出力インピーダンスを高くするのが役割なのか?
前回の記事では、VOX V847の後にFuzzFaceを接続すると、ギター、ワウ、FuzzFaceの回路が干渉してしまうということを予測していました。
なので、それを確かめてみました。
まずは、VOX V847単体での出力波形と、FuzzFaceを絡めた時の中間地点での波形を出してみました。
上の図のように、FuzzFaceを絡めた時の波形は明らかにFuzzFaceの動作(フィードバック回路)が合成された波形になっていますね。
次に10K抵抗を挟んだ時は、バッファ回路を挟んだ時の波形も見てみます。
いずれも正弦波に近くなったことから、FuzzFaceのフィードバック回路からの干渉が無く動作しているように見えます。
これらの結果にから、FuzzFaceでワウが動作しないのは2つのペダルの信号の干渉が発生していると予測できると思います。
バッファは回路を分離する役割もある
こちらのブログの記事でバッファ回路の役割が説明されています。
「なんだ、1倍にしか増幅しないんじゃ意味ないんじゃないか?」と思う方も多いとおもいます。でも、これはとても大事な回路なのです。
Via:電子回路の豆知識 – ボルテージフォロア
ボルテージフォロアの存在理由は主に二つあります。それは、
・インピーダンス変換
・回路の分離
バッファを追加することで、ワウの回路とFuzzFaceの回路が分離されることでワウペダルのペダルの本来?の動作が行われるようになるということだと思います。
但し、FuzzFace回路は実はギターが接続されることが前提で設計されているようなので、間にバッファを挟んで回路を分離されてしまうと逆に美味しい動作が無くなるということも言えると思います。
ということで、初期のアナログ回路って深いなぁと感じています。