RangeMasterからのKeeley JavaBoostかFulltone Ranger寄りに、そしてマイナス電源対策も
前回の記事ではRanger Masterを作って見たくなった理由を書かせていただきました。
そして実際にどのような回路にするのか検討して見ました。
RangeMaster回路の課題と対策
ELEDSTROSMASHのDallas RangeMasterの分析記事を読んでみるとこの回路を自作する上で3つの課題(特徴)が見えてきます。(下の回路図はiPadのiCirkuitアプリで描いてみました。)
- 入力のカップリングコンデンサーの容量値が小さいことで、低域がカットされトレブルブースターとなっている。
- トランジスタのバイアス電圧次第で、動作が大きく違ってくる。
- PNPトランジスタ回路はマイナス電源が必要で、アース側が電源の+となる。よって共通のアダプタを使用すると、隣のペダルとショートしてしまう。(上の回路図をみるとイン/アウトジャックのアース側にもプラス9Vが接続されています)
ELECTRO SMASHではRangeMaster Modを制作するノウハウとしてこれら課題に対応するメリットが書かれています。
- 入力のカップリングコンデンサーを変更すると、低域のブースト周波数を調整出来る。
- トランジスタのバイアスを可変にすることで、歪みの様々な動作を選択出来る。また様々なトランジスタに対応できる。
- 他のエフェクタを共存させる為には電源の工夫が必要である。
大御所先駆者KeeleyとFulltoneのRangeMasterクローンを見てみる
で、上の1と2の改善を取り入れたのが、Keeley Java Boostや、Fulltone Custom Shop “Ranger” Treble Booster となっています。
Keeley Java Boostのデモ動画
Fulltone Custom Shop “Ranger”のデモ動画
Keeley Java Boostは、ディップスイッチで入力のコンデンサー値を、Fulltone “Ranger” はローターリースイッチで入力のコンデンサー値を変更できるようになっているようです。
それにしてもどちらのペダルも、かなり官能的なオーバードライブサウンドだと思いませんか?
これがたった1石のトランジスタから出ているのですから、ゲルマニウムトランジスタの素晴らしさが判ると思います。
ゲルマニウムトランジスタはバイアス調整が必要
そしてバイアス調整の話ですが、やはりここでもゲルマニウムトランジスタのバラつきと、温度依存性が問題になって来るようで、JavaboostもRangerも対策がされているようです。
こちらがJavaboostの基板。(Via : The Gear Page)
こちらがFulltoner Rangerの基板(Via : Fulltone)
両方のペダル共にトランジスタのバイアス調整が可能な半固定抵抗が付けられていますね。
PNPトランジスタのマイナス電源対策
マイナス電源問題ですが、実は下の回路図のようにイン/アウトを、マイナスアースにそのまま接続しても動作するのです。(する場合がある)
しかしELECTROSMASHによれば、この接続だとノイズを増幅したり、回路が不安定になるので避けるべきであると書かれています。
しかし、Javaboostを開発したRovert Kelley氏自身がDIYstompboxの掲示板に詳細な回路図までアップして説明されています。
keeley氏によれば、PNPトランジスタの回路のグラウンドをケースのアースに接続しないで、入出力プラグのシールド側(通常のGND)を直結し回路電源を共通アースから分離することで、問題無く動作すると解説されています。
しかし、今回私がやりたいことは、Morning Gloryと同じペダルケースに入れたいので、このような電源の取り回しは難しいと考えました。
そこで、ELECTROSMASHが提案しているのは、プラス電圧をマイナス電圧に変換するチャージポンプ回路を追加するということです。
上の回路図では、MAX1044チャージポンプICを使って-9V電圧するということで、提案されています。
Range Master Mod回路決定
以上のこと、そして、KeeleyさんがアップしてくれたJava Boost回路を元にして、以下の回路図で制作することにしました。
- マイナス電圧チャージポンプの追加
- 3つの入力コンデンサの切り替えスイッチ追加。この値はELECTROSMASHが試している最大容量0.1μFまで試してみたいのでこうしました。また単にON-ONスイッチしか手元になかったというのもあります。(KeeleyはON-OFF-ON、Fulltoneはローターリースイッチ使ってますが)
- ゲルマニウムトランジスタのバイアス調整ができるように2つの半固定抵抗を追加しました
- 残り2つのコンデンサも容量アップしています。RangeMasterの場合、入力コンデンサ値でほぼ周波数特性が決まりますので、あまり効果が無いかもしれませんが、同じケースに入れるMorning Gloryの入力カップリングコンデンサも10nFだったので、同じ容量のコンデンサが直列になり、ローカットされそうだったので2μまで増やしました。(コンデンサの直列容量計算すると1μ以上で影響が無くなります)
続きます
|
|
|
|
ピンバック: そうだRangeMasterを作ってみよう!LTspiceでシミュレートしてその意味を考えてみた | Project JAZZCASTER