オクターブファズのトランジスタのhFE値ペアを計測してたら沼にはまった
ということで、前回は回路図通りにブレッドボードで試してで音が出ることが確認できました。
ブレッドボードをプリント基板化
そのブレッドボードをテスト基板化しました。プリント基板にしないでユニバーサル基板で手配線すると、パーツ数の二乗に比例してwミスが多くなるので、プリント基板化はとても便利ですね!
この基板は、Guyatone WAH-FUZZの初段ブースター回路、UNIVOX Super Fuzzの初段ブースター回路、オクターブ回路、そして、両機のEQ回路の全てを組み込んでいますので、組み合わせてテストすることが出来るようにしました。
そして、ソケットを使ってトランジスタをカンタンに変更出来るようにしています。
ということで、試作の次の段階の準備が出来ましたので、いよいよトランジスタの選定作業にとりかかります!
みんな大好き”hFE”を計測しよう
自作エフェクターでトランジスタを使う時のキーワードといえば”hFE(直流電流増幅率)”ですよね、とっても気になりますw
で、今回のオクターブファズは差動増幅回路ということで、オーディオ的に考えれば2つのトランジスタはhfeを揃えてペア選定する必要がありそう、、、
ただFuzzなので揃えた方が良いのか、揃えない方が良いのか、よく判りませんw
ですがトランジスタのhFEは必ず計測するのが基本だとおもいますので、今回も計測してみます。
トランジスタは2SC828でhFEを計測します
で計測したのは、ネットでGuyatone WAH-FUZZの回路図で掲載されている2SC828ですが、まあ当時の音声増幅回路で一般的に幅広く使われていたトランジスタの1つのようですね。
アマゾンの激安2500円マルチファンクションテスターでhFEを計測してみた
で、まずAmazonで2500円くらいで販売されているMuiti-Function Testerで計測してみます。
アマゾンでは複数のブランドから発売されていますね。
このテスタは2000円から3000円という激安価格にもかかわらず、トランジスタのhfeを計測できるだけでなく、ダイオードのVf値、FETのIDSS値、に加え、抵抗の抵抗値や、コンデンサの静電容量などなど、様々な電子工作部品を計測することができる夢のようなツールですね。
これ1台持っておけば電子工作のパーツ選択がとても便利になると思います。
で2SC828の計測結果がこちら
2SC828の計測結果はコレクタ電流Icが1.8mAのときhFE=205と表示されていますね。
テスターのおまけhFE計測でやってみた
次に計測したのは所謂テスターです。
私がいつも使っているテスターはDER EE社の DE-200Aで、おそらくギター、アンプ界隈でこのテスタを使われている方も多いのではと思います。
でDER EE DE-200Aのアマゾンでの販売価格を調べてみると、昔よりもお値段少し上がっている感じがしますが、、、、
でこのDE-200AにはトランジスタのhFEも計測出来るようになっていますので、これで2SC828を計測すると、hFE=234という結果になりました。Icの値は不明ですw
PEAK Atlas DCA75 ProでhFEを計測してみた
次にこちらもエフェクター界隈では定番かと思われます、PEAK社のテスターAtlasです。
PEAK Atlasは、LCRシリーズはインダクタ、キャパシタ、抵抗の計測、ESRシリーズはコンデンサ(キャパシタ)に特化した計測、DCAシリーズはトランジスタなどの半導体を計測するツールで世界中で使用されている方が多いと思います。
で私が今回使ったのがPeak Atlas DCA75 Proですが、Amazonでの価格調べたら、、、高っ!確か少し前はこの半額で購入できていたような(^^
でDCA75 Proで2SC828を計測するとhFE=252となりました。
こちらは、PC側の画面で表示された詳細情報
Ic=5.02mAで計測した時のhFEが252ということが判ります。
3つのhFE計測機の結果まとめ
ということで、2SC828を計測した結果をまとめると
- 2500円マルチファンクションテスター : hFE=204 at Ic=1.8mA
- DER EE社の DE-200A : hFE=234 at Ic不明
- Peak Atlas DCA75 Pro : hFE=252 at Ic=5.02mA
ということになりました。
同じトランジスタのhFEを計測しても、結構違うものですね、、、、、
更にトランジスタのhFE/Ic特性を計測してみる
このような違いの原因も含めて、更にもう少し知りたいということで更にhFEを詳細に計測することにしました。
ちなみに、DCA75 Proは、hFEだけでなくトランジスタの様々な特性を計測する機能が付いています。
DCA75は下図のように、VOLTAGE SOURCEの電圧と、RLOAD抵抗と、Ib電流を可変させて計測出来るようになっています。
この機能を使った hFE/IC特性の計測結果のグラフがこちら。
2500円マルチファンクションテスターが計測しているIc=1.8mAの領域は各グラフの下限になってしまいますよね。
これはおそらくですが、2500円マルチファンクションテスタは電源がプアなので1.8mAでしか計測できないのではと予測しています。
一方で、DCA75 ProはIcの値を2mAから11mAまで、またVce値ごとに計測できて、その結果のhFEの代表値として5mAの計測結果を示しています。
ちなみに、今回制作するオクターブファズの差動増幅部の2SC828トランジスタのシミュレーションでは最大10mAで動作するようで、まさにこのレンジで計測出来ているのは良いことですね。
2SC828はIcの変化によってhFEが大きく変動するので、2500円マルチファンクションテスターのようにグラフ下端の1.8mAだけの値はあまり参考になりません。
で、2SC828を50本くらい計測した結果、Ic=5mAでのhFEが同じような値でも、このhFE/IC特性を見るとまったく傾きが違う特性になっていたりします。
なので、このグラフの傾きまでも似ている特性をのトランジスタを探すと、ほぼ無理(2SC828の場合w)で、やや近いのがやっと1ペアか2ペア出来るという感じでした。
2SC828と2SC1815のhFE/IC特性の違い
ネットで調べると、トランジスタ規格表には生産終了した2SC828の互換トランジスタこそがもっとも有名な2SC1815と記述されているということです。
ちなみに、その2SC1815も廃盤品になっています( ノД`)シクシク…
で、手持ちの2SC1815のhFE/Icを計測した結果がこちら。
これを見ると、2SC1815は、Icの値によってほとんどhFEが変化しないという特性ですね。
なので、2SC1815の場合は、条件を変えて計測しないでもピンポイントのIcで計測したhFE値だけでペアを判別しやすいということですね。
互換トランジスタといっても、このような違いがあるのが面白いですね!
トランジスタのhFE計測まとめ
まぁ繰り返しになりますが、今回の回路では、差動増幅の2つのトランジスタをアンバランスで動作させていますのでhFEがバッチリ合っているペアトランジスタを選別することはそれほど重要ではないかもしれませんし、あえて違うトランジスタを選ぶという作戦もあるかもしれません。
ただ、いずれにしても、トランジスタをちゃんと計測してデータを集めることで、組み合わせ時の音の違いも理解しやすくなると思います。
また、2SC1815の素晴らしい特性も理解できてよかったですw
まとめのまとめはこんな感じです
- 2500円マルチファンクションテスターでのhFE計測はIcが低い時にしか計測できない、また計測結果の精度も不明
- テスタのおまけhFE計測機能もIc値が不明なので、参考程度
- DCA75であってもあくまでも簡易計測機なのでhFEを計測したからと言って安心できない<元も子もないw
- 出来れば計測時のIc値を把握しておく必要がある
- 2SC828のようにIcでhFEが大きく変動するトランジスタは同じhFEでも同じ特性とは限らない
- 2SC1815はIcが変動してもhFEはほぼ一定
ちなみに、アマゾンの2500円のマルチファンクションテスターだけでhFEを判別するには、少々不安もありますが、そもそも回路上において特定のトランジスタのhFEはおおよその値で良い場合がほとんどですし、それよりも、このテスターが最強なのは、トランジスタを差して計測するだけで、3本の足の配列まで見つけてくれることです。
同じように、コンデンサや抵抗もおおよその値を簡単に計測できますので、たとえば、コンデンサの104の表示とか表示がpFかnFかμFが判らない場合、また抵抗のカラーコードが不明な場合(オレンジと赤がわかりにくいとかw)の場合は最強のツールになりますので1つ購入しておいて絶対損は無いと思います。
ただ、いずれにしても計測値は参考情報にしかすぎませのでご注意を。