Maxon OD808が我が家にやって来たのでIbanez TS808HW2とTS9と比較してみた – 周波数特性編
前回、Ibanezが日本の工場で手作業でしかもハンドワイヤードで組み立てた新TubeScreamerとして話題になった TS808HW2を運よく発売直後にお借りできたことで、私が愛用のTS9 1st Reissueの比較記事をアップさせていただきました。
で、今回某リサイクルショップで、Maxon OD808 Overdriveが魅力的な価格で販売されていたのを見つけて思わずゲットしてしまいました。
皆さんご存じの通り、おそらく世界で最も有名なエフェクターの1つであるTubeScreamerですが、このペダルはかの日新音波製作所に在籍されていた伝説の設計者である田村氏が設計した回路で1979年にIbanez TS808 Tube Screamer Overdrive Proとして販売を開始したということはあまりにも有名なお話ですね!
で、このOD808はMaxonブランドです。しかもMade In Japan!
つまり元祖日新音波製作所謹製ということになりますので、機種名こそOverdriveですが808の型番をつけていることからしてもまさにTubeScreamerファミリーの1員の筈です!
なので今回はそれを確認する為にいつものように周波数特性を計測し、Ibanez TS808HW2とTS9の結果と比較してみたいと思います。
OD808 / TS808HW2 / TS9 バイパス時の周波数特性
まずは、バイパス時の周波数特性を計測してみたいと思います。
今回はグラフの黒色がIbanez TS808HW2、緑色がIbanez TS9 1st Reissue、赤色がMaxon OD808 Overdriveとしてプロットします。
TS808HW2はバッファ回路を通さないトゥルーバイパスなので、20Hzから20KHzまでフラットな特性ですね。
そして、TS9は電子スイッチの為、バッファを通りますので、100Hz以下が少し減衰してますね。
で、Maxon OD808ですが、クリックのあるフットスイッチが搭載されていますので、トゥルーバイパスだと思っていましたが100Hz以下に減衰が見られますね。
ということは、OD808はバッファードの電子スイッチなのか、あるいはKLON CENTAURのように、機械式のスイッチながらバッファードバイパス回路になっているのでしょうかね。
裏ブタ外して確認しようとしましたが、ネジがトルクスか何か(持っているけどバイクの工具箱にあってめんどくさかった)なので後日確認させていただきたいと思います。
Maxon OD808 Overdrive周波数特性
こちらがMaxon OD808 Overdriveの周波数特性を、BALANCE(LEVEL)ツマミを固定にして、DRIVEを0、2.5、5、7.5、10でそれぞれTONEを0、2.5、5、7.5、10に設定して周波数特性を計測した結果です。
まず、ツマミ位置の目盛りが無いので2.5と7.5の位置は消してもう少しシンプルにしてみます。
同様に、Ibanez TS808HW2とTS9も計測していますので次は個別の設定で比較していきたいと思います。
TS9の周波数特性グラフ
TS808HW2の周波数特性グラフ
この3つのTubeScreamer三兄弟、やはり周波数特性は似ていますね。
ただ、TS808HW2は全体のレベルが高いですが、これは前回の分析記事でも説明しておりますが、Ibanezが公表している通り約6dbのブースト回路が搭載されているということでその結果通りになっています。
更に絞って比較してみます。
TS三兄弟のDRIVEツマミを0にしたときの比較
TS9とOD808がほぼ完全に重なっていますので、TS9のプロットが見えなくなっていますね。
このプロットグラフによって、TS9とOD808のそれぞれの回路の後半のトーンEQ部の定数は同じということが予測できます。
またTS808HW2も上に並行移動しているので、やはりTubeScreamer三兄弟ということになりそうですね。
TS三兄弟のDRIVEツマミを5にしたときの比較
DRIVEを5にすると、OD808とTS9が少しズレていますね。
これは、私の操作誤差、ツマミの挿入角度の誤差、DRIVEポットの誤差が考えられますがゲイン回路中の抵抗やコンデンサの定数の誤差か、あるいはわずかにパーツの定数が違うのかもしれませんね。
ただ、TS9のドライブを少し下げるとOD808と重なると思いますので、実際使う場合は聞き分けるのが難しいかもしれません。
TS三台のDRIVEツマミを10にしたときの比較です
DRIVEツマミを10にすると、TS9よりもOS808の方の400Hz以下のレベルが逆転していますね。
これはもしかしたら、ゲイン回路のどこかが異なる可能性もありますが、これくらいはパーツの誤差でも出る可能性がありますね。
ただ、TubeScreamerの使い方としてはDRIVEツマミを10にすることは少なそうなので、両者のペダルの周波数特性を見る限り同じ使い方になると思います。
その代わり、DRIVEを下げて使う場合、つまりローゲインで使う場合、TS808HW2の6dbブーストはかなり有効な仕様だと思います。
TS三兄弟OD808、TS9、TS808HWの周波数特性比較まとめ
- OD808はバッファードバイパスかもしれない(これから確認します)
- OD808とTS9はDRIVEツマミ5あたりまで似た周波数特性、それ以降の差もわずか(個体差も考えられる)
- OD808とTS9とTS808HW2はいずれもTubeScreamerの標準的なEQとなっている、つまりまさに三兄弟!
ということで、Maxon OD808は、まさに元祖、日新音波製作所から今でもMade In Japanで作られている本当のTubeScreamaerで、TS9より軽量コンパクトでボードへの収まりも良いのが魅力ですね!
一方で、ちょっと気になるのは、バッファードバイパス、あるいは、完全なトゥルーバイパス回路でいない可能性もあるのが気になるところです。(トゥルーバイパスと」思い込んでいたので)
ただ、バッファだとしてもバイパス時の周波数特性はTS9よりもわずかに低域の減衰が少ないので、TS9と同等以上と考えるとまぁ気にする必要は無いかとおもいます。
そして、Ibanez TS808HW2ですが、6dbブーストというローゲインでめっちゃ使えるモディファイをされていながらも、TubeScremaerとして基本のEQは(おそらく)そのままで作られているのは尊敬に値します。やはり田村氏が最初に設計されたTubecreamerの回路は今でもベストということだと思いました。
皆さんはこの3台の中ではどのTubeScreamerがお好みですか?