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VOX V847ワウのモディファイをシミュレーションしてみた


これまで、ワウペダルの基本であるVOX V847の回路をシミュレーションしてきましたが、オリジナルの回路を改造したり、ごっそり基板ごと入れ替えたV847modペダルが存在します。

おそらくですが、少なからずそれらのワウペダル改造はELECTOROSMASHのこちらの記事を参考にされているものが多いと思います。

  • Modifying the Wah-Wah Q factor. Q値のモディファイ
  • Modifying the Sweep Range. スイープレンジのモディファイ
  • More Bass and Gain Modification. 低域側と全体ゲインアップのモディファイ
  • More Mid Content Modification. 中域の強化モディファイ
  • The V847 Wah-Wah Inductor. ワウワウのインダクタの変更

ということでどんな結果になるかやってみましょう。(^^

Q値のモディファイ

ワウペダルは特定の周波数を通過させるバンドパスフィルタの一種ですが、その通過の鋭さを表すQ値を大きくするという改造ということです。

下の33KΩを100KΩにしてシミュレーションしてみました。

シミュレーション結果がこちらです。

青い線がオリジナル回路、赤い線がModした状態でペダルを操作した時の周波数特性となります。

バンドパスの山が高くなっていますね。つまりQ値が高くなったということです。

ここの抵抗を100KΩにする方法は、ワウペダルの”ボーカルモッド”と呼ばれているようで、よりワウが強く掛かることで人間のボーカルのように聞こえるということになるのでしょうか。

スイープレンジのモディファイ

スイープレンジはペダルを操作した時の可変周波数の幅ですね。

下の回路図の0.01μFのコンデンサを変更することで、スイープレンジを変更出来るということです。

0.01μFを0.1μFにした時のシミュレーション結果がこちら。赤い方がモディファイ後の周波数特性です。

コンデンサの容量を大きくするとより低域側にレンジが移動するということですね。
0.1μFですと下限が200Hz以下となりますので、ギター用ならちょっと低域側過ぎると思います。
一方でベース用ワウ作られる方は参考になるかもしれません。
ただ他のカップリングコンデンサで低域が削られていますので総合的な調整が必要かと思われます。

次はコンデンサの容量を小さくしてみます。0.01μ→0.001μにしてみます。

スイープが高域側に移動していますが、ギター+ワウ回路全体で高域の周波数特性が落ちるのでQが低くなっているようですね。

つまり0.001μFは容量値が小さすぎるということも判りました。

低域側と全体ゲインアップのモディファイ

初段のトランジスタのエミッタ抵抗を減らすことでゲインアップとなるようです。
510Ωを150Ωにしてシミュレーションしてみました。

赤い方がモディファイ後の周波数特性ですが、ゲインが押し上げられているようです。
ワウの場合は高域が結局カットされますので、結果的に低域側が同時に押し上げられているという感じですね。

中域の強化モディファイ

次は中域側の強化というモディファイです。1.5KΩの帰還抵抗を2.7KΩに変更します。

赤い線がモディファイ後の周波数特性です。たしかに高域はあまり変化無く、中域側が少し強化されていますね。

ワウのインダクタの変更(インダクタンスを変えてみる)

ワウの心臓部と言われている、インダクタ(コイル)を変えるとどうなるかのシミュレーションです。

こんな丸い部品で、中身はコイルとそれを巻く芯になっています。

VOX V847の回路的には500mH(ヘンリー)のインダクタがつかわれていますが、200mHに変えるとどうなるかをシミュレーションしてみます。

赤い線がインダクタを200mHに付け替えた時の周波数特性です。インダクタの値(インダクタンス)を小さくするとスイープが高域側にシフトするようですね。

次はインダクタンス値を500mHから1000mHに増やしてみます。

スイープレンジが低域側に移動しましたね。

つまり、コンデンサの容量でもスイープレンジが変化しましたので、インダクタと併せてスイープレンジが決定するということです。

でここで元も子もない話ですが、ワウペダルの最も基本的なモディファイは、可変抵抗にかかるギアの調整です。
ワウペダルの操作によって可変抵抗が、0から100まで変化させているわけでは無く、ある程度狭い範囲しか可変させていないということですね。
もしペダルの操作によって、ポットの回転角度を超えると機械的にストレスが掛かり故障の原因になるからだと思われます。

結局回路的に電気的なスイープ幅があっても、機械的なスイープ幅がそれよりも狭い制限になります。
なので皆さんは、コイル、コンデンサ、そしてギアのセッティングも含めて良い塩梅のところを探してみてくださいね!

ワウのインダクタの変更(直流抵抗値を変えてみる)

で、インダクタの別の特性値が直流抵抗値です。

理想的にはこの直流抵抗値が少ない方が理想的なインダクタということになりますが、実際はピックアップと同じように長い巻線によるコイルですので直流抵抗値が発生します。

ELECTROSMASHの記事によれば、低くて10Ωで100Ωくらいなのもあるということですので、シミュレーションしてみます。(ちなみに、これまでのシミュレーションは50Ωで計算しています。)

どちらも500mHですが赤線が直流抵抗値10Ω、青線が100Ωの結果です。

このように直流抵抗値が少ない方が低域側のQが高くなる傾向があるようです。
まぁ実際はこれほど極端に違いが出てくるわけでは無さそうですが、それでも聴感上は差が出て来るものと思われます。

ワウのインダクタは重要なパーツですが、コンデンサや抵抗よりも一般的には誤差が多く、クオリティによって直流抵抗値なども差が出やすいパーツですので見ただけでは性能が判らないのが難点だとおもいますので、やはり定評のあるパーツをセレクトしたいことろですが、ギターペダルの場合特性が良い=良い音?とは必ずしも言い切れないのが難しいところです。

トランジスタのhfeが違うとどうなるのか?

インダクタと同様に気になるのはどのようなトランジスタが使われているのかということですね。
シミュレーションでは細かいトランジスタのデータが準備出来ないので、同じトランジスタでhfe(電流増幅率)が異なるものを想定してシミュレーションしてみました。

hfe=150(青線)と、hfe=550(赤線)でシミュレーションしてみました。

hfeが高い方がQもより鋭くなるようですね。

ということで、これらのシミュレーションを行ってみましたが、まずは抵抗とコンデンサ、それに加えてインダクタやトランジスタもチョイスすることになりますので、様々な組み合わせがありそうです。

インダクタを探しまくって付け替えて見るとかトラジスタもいろいろ探してみるのも楽しいですが、これらのパーツの中で、インダクタとトランジスタが最もバラつきが多いものですので、ただ付け替えて音を比較して見るのもある意味ギャンブル的だと思います。やはりちゃんと計測することで方向性が定まると思います。

また今回のシミュレーションではそれぞれ、V847のノーマルの特性よりもより激しくする、より極端に、より印象的にする方向性に向かいますので改造すると必ず音は変わりカッコいい音にはなるかもしれませんが、V847がこのバランスで長年製品化しているというのも尊重したいところだと思います。

皆様もワウペダル改造にチャレンジされるのも良いかもしれませんね!





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